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大林宣彦監督の寄稿文


絶讃です!

 みんなに見せたい。ぜひ、見て欲しい‼︎


 昔、僕がまだ小さな子どもだった頃。世のなかには映画がいっぱいあって、どれも花やかで芳ばしく、面白くって楽しくて、ハラハラドキドキワクワク、うっとりしたりちょっぴり切なくなったり。そんな映画を生まれて初めて見て、……

 ーーワーイ! 映画って、素敵だぞう‼︎

 と心から叫んだ、

 あの時の全身の悦びを、思い出しました。


 写真が動く。止った画が活動する。そのときめきと哀感。その映画なるものの総てが、ここにはあります。

 でもこの映画に登場する人物たちは、みな切り紙に描かれた動かない絵。それを棒の先にくっつけて、手でもってカタカタガクガク、ギクシャクと動かして、只それだけ。表情も変わらず、それらが実写の京の都の風景の前を右往左往する。

 なのにそれらが、それを見る僕らの心のなかで千変万化! まことにデリケートに人の劇の情感を醸し出す。止った絵がカタカタと動き出し、モノクロオムのサイレントからトーキーへ。映画の初心の時代の感動を思い出す。ああ、音も聴こえる! セリフもサウンドも良いな。

 そうだ! 一ヌケ二スジ三ドウサ、それにオトが加わって、もう完璧だ‼︎ 光と影と色彩による映像処理の充実の上に、ストーリーは我が日本における映画発生の地、地元・京都の古き豊かな文化を語る古里自慢。その虚実の狭間を生きる現在の日常を走るタクシードライバー君の、過去・未来を結ぶ、夢。失ったもの、また手にせねばならぬもの。それらの混沌たる映画世界を、切り紙名優たちのチャーミングなアクションと粋な台詞回しで語り、音響バランスの見事な整いのなかで、この混乱の世に住む現在の僕ら日本人に、一つの明日への道筋を示す。その悦びを導く音楽は、映画音楽の傑作だ。


 映画誕生から百二十年の歴史が、ここに集う若い人たちのような、豊かな映画的才能を生み出したことに、僕は深い感動と至福の思いを覚える。彼らの才能に心からの敬意と祝福を‼︎


 という訳で、僕は、絶賛頻りであります。

 この映画と出逢えて、まことに幸福でありました。ぜひ、みんなに見せたい、見て欲しい。

 ここには、いまは失われたかも知れない、映画の素晴らしい、初心が漲っております。

 映画再生の、予感が垣間見られます。

 この映画と、出逢って下さい。

 ーー『タクシードライバー祗園太郎 THE MOVIE すべての葛野郎に捧ぐ』が、その題名です。

 そうです! これはの葛の物語なのです。日本の山野に生まれ育つ、豊かな命、です。

 現代文明社会の悲劇の一つ、動き過ぎ、情報化し過ぎる社会構造に対して、その動きを抑制することで、むしろ僕らの豊かな想造力に訴えた、これは映画表現のフィロソフィをこそ示す、映画の名作の一つであります。

 この一本の映画を作り上げたみなさん、ーー監督の永野宗典さんを囲むお若いあなた方の流した沢山の貴い汗に、心からの有難うと、乾盃を!……


        大林宣彦(映画作家)

            2016・11・13